「感染性心内膜炎」という病気

14日月曜日5時、一睡もしないまま、朝を迎えた。

循環器内科の先生に告げられた病名は「感染性心内膜炎」簡単に言うと、心臓に大きな菌の巣が出来ている状態。

参照:感染性心内膜炎|慶應義塾大学病院 KOMPAS

 

感染性心内膜炎だけで言うと、心臓に出来た菌の巣を手術で取り除けば概ね問題はない。しかし、夫の場合は、厄介なことに、その菌が全身に散りばめられてしまっていて、心臓以外の臓器、また、最悪なことに脳にまで飛んでしまっている。そのため、合併症として、脳梗塞くも膜下出血、軽い心不全を引き起こしていた。

 

脳に出血がある限り、心臓の手術はすぐに出来ない。

手術をしないと心臓の菌が飛び続け、いつまたどこにいくか分からない。

 

心臓の手術の際、一時的に心臓と人工心肺を取り替える。手術が出来ない理由は、人工心肺では、体内の血が凝固してしまうので、ヘパリンという血液凝固を起こさなくする薬を利用し、全身の血をサラサラにするため。

血がサラサラになってしまった瞬間、脳内に血がまわり、植物状態になる可能性が高い。脳の血が止まるまでは、手術は不可能。治療は、抗生剤の投与がメインとなった。最低でも4週間の投与となる。だが、抗生剤だけで、心臓の大きな菌がなくなることは難しい。

 

そもそも、感染性心内膜炎の原因は、イギリス勤務にあたって実施した歯の治療、親知らずの抜歯、もしかすると、予防接種も関連しているかもしれないということだった。夫は、5年前に検診で心臓弁膜症と言われており、心臓疾患がある人が体内に出血を伴う治療をする際は、細心の注意が必要で、菌が心臓に溜まりやすい。弁膜症自体は、そこまで状態が悪いわけではなかったので、気にしておらず、私も聞いたこともなかった。弁膜症を知る予防接種の先生、歯科医院の先生からも何も説明はなかった。

 

予防接種が重なったこともあり、状態の異変に気付くのが遅すぎた。私ももう少し早く病院に連れていけばよかったと思うばかりだった。脳に菌が行ったのは、恐らく日曜日。もうどんなに後悔してもしょうがなかった。

おかしいとは思っていたが、まさか夫が死に直面しているとは思ってもみなかった。心臓の病気、脳への菌、脳疾患、脳の障害、すぐに現実を受け入れることが出来なかった。

 

14日月曜日8時、CCU(冠疾患集中治療室治)への入院。

 

病室に入ると、しまちゃんは、たくさんの管に繋がれて病院のベットにしんどそうに目をうっすら開けて寝ていた。意識はほぼない。言葉も話せない。周りも見えておらず、焦点も合わない。そして、菌が血管に詰まり、全身には見ていて痛くなるほど赤い斑点があった。

 

「ご家族や本人に会わせたい人は全員呼んでください。本人の意識状態がかなり悪くなっています。いつどうなるかわかりません」と先生からの指示。

 

同日14時、友人や遠方の家族が揃い始める。

同日17時、改めて、病気の説明を受ける。

同日19時、ご両親に任せて、帰宅。

 

15日火曜日早朝、目が覚めた瞬間全てが現実になった。

いつも隣にいるはずのしまちゃんがいなかった。

目から涙が止まらなかった。

 これが夢であってほしいとひたすら思った。

 

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